まずはネタバレ無しのレビューです。
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見る前から予告で「サマーウォーズ」がチラついていた本作。とはいえもうあの映画も10年以上前だし、似たような内容だとしても時効かなと半分は保険張りながら見に行きました。ところがどっこい、サマーウォーズとは全く別の戦いをしていましたよこの作品は。そりゃ設定的には似ているところもありますとも。でもサマーウォーズは割とシンプルな物語だと思うんですよ。ボーイッシュな冒険譚を感じさせるように剥き出しの好奇心で進んでいく物語。それに比べこの作品は本当に深いメッセージがあるんだと感じました。そして何よりも関心できるのは「メッセージは複数ある」と思われるところであり、見る人によってそのメッセージは変わるだろうということです。なので私にとってこの作品がどんな風に染みたのかを書いて行きたいと思います。まだご覧になっていない人は是非劇場に行ってほしいですが、見るなら「座席の真ん中」をとることをおすすめします。別に大層な仕掛けがあったわけじゃないですが、主人公に入り込むときに左右均等にスクリーンが見えるポジションで視聴すると入り込みレベルがグッと上がるように感じました。ご参考にしてください。

ネタバレあり
本当はレビューを書くつもり無かったんです。ただね、とにかく絶賛したい。劇場出てからも泣きそうになったのは初めてで、考えれば考えるほどメッセージ性が強いんですよ。これは個人の解釈をあーでもないこーでもないと垂れ流すことがこの作品の味になりそうだと思ったので、私が受け取ったメッセージを書きたいと思います。ただその前に、絶賛ばかり並べるのも嘘くさいので、気になった点とか先に書き出しとこうと思います。

タイトルにも書いた通り、見始めて1時間くらいだと思うんですが「美女と野獣」「サマーウォーズ」を合わせた作品かなと思って冷めました。お城で展開された心を交わすシーン辺りです。あの辺り、妙にCGがディズニー感ありませんでしたか?Bellのでっかい目と下まぶたの動きとか首で視線を動かす感じとか。それも相まって美女と野獣だと思いましたね。上映後に近くで見てた高校生たちも美女と野獣と口走ってました。みんな考えることは同じなんだなと(笑)
それから、演出重視で設定は若干置き去りでした。テクノロジーとかも視野や五感を制御下に置くデバイスを走りながらつけることができる謎とか、Uの世界にいる間の現実はどういう状態なのかとか。リンクしてるって言うけどリンクしているからこそ人間の脳が追いつかない気がする。
最後にモブとか周辺の人の絵が雑すぎでした。とくに冒頭は酷かったですね。駅員さんは少し怖かったし踊ってる吹奏楽部はメモ書きかなと思った。目が点のモブもいましたね。逆に潔い手抜きとすら思いました。
あとはなんとなく想像通り、意外性は少なかったですね。母が流された川に引き寄せられそうな鈴を引き止めたのが忍なのも、竜が虐待受けてるのも想像の範囲内で意外性は有りませんでした。

これだけ気になる点が合ったにしても号 泣。
だからすごいのだ。この感動の裏にはメッセージが刺さったというのが大きく、私はこの映画から2つのメッセージを受け取りました。
・見守る優しさ
・正しいと認められた者が正しい。その敵は悪。それでいいのか。
です。もうね、これが響いて響いて仕方ない。舞台としては今よりもずっと進んだテクノロジーの中で起こる物語なんですが、人の挙動や感情の動きは今の社会でとられるムーヴと何ら遜色がない。だから今の世界と照らし合わせて考えてしまい妙に染みるんです。それぞれ説明したいと思います。

見守る優しさ
父、合唱団のみなさん、しのぶくん。この人達の鈴に対する優しさが好き。お父さんについては、ご飯いるかとかめっちゃ気にかけてるのに踏み込んでこない距離のとり方がいいですよね。そして東京へ飛び出していった鈴に対して熱いメッセージを送るあの感じ。母の死後もずっと鈴を見守っていたんだなってすごく伝わる。こういう親の愛情ってめっちゃくるものがありますよね。
合唱団のみなさん、鈴=Bellだと知ってて黙っている大人な見守り方。鈴が引っ込み思案な鈴虫さんであることをちゃんと見てきて知っているから、本人が言ってくるまで立ち入って来ようとしない。思春期の子供との付き合い方がパーフェクト。でも本人に危険があるとわかったらちゃんと助けに行く最後の砦なのも安心感抜群。
忍くん、ずーっと見守ってる。なにかあれば顔でわかる、なにか感じれば声をかけ聞こうとしてくれる。しゃべるの躊躇した鈴に無理してない?と聞けるし待てる男。そして鈴は鈴として人前で唄える子だと信じている。守らなきゃいけない子だと認識しているのに、弱い子だとは思っていない。その絶妙な信頼感がほんと好き。
みんな「好きだ」と言わなくてもちゃんと鈴のことを愛しているんだとわかる描写がいいですよね。行動で伝わるほどの想いは相当に大きな愛情なのだと思えちゃう。

正しいと認められた者が正しい。その敵は悪。それでいいのか。
この映画では正義と悪を割としっかり描いていると思います。竜と自警団(名前わすれた)では、Uの世界では竜が悪役で自警団が正義のヒーローとして扱われています。自警団はスポンサーを従え社会的に認められており民衆からも多くの支持を得ています。対する竜は身元不明で対戦相手をボコボコにするというスタイルが気に食わないために支持は少なく悪役とされている。でも蓋を空けてみると、竜は対戦で勝利してきただけだし弟のヒーローになるために勝ち続けてきただけである。理由や背景、詳細を知ろうとも理解しようともせず、多数決で優勢な自警団がすることは正しいと脳死で受け入れられ、集団暴行や放火などの横暴で暴力的な手段を使っていても問題視されない。一度「正義」と認知されてしまえば、物事の本質では無いところで善悪が決まる危うさが感じ取れます。
それからBellと元歌姫(名前忘れた)の対比。元歌姫がちやほやされていたところに、突然Bellが現れ人気が出始めた。人気がBellに集まった頃、元歌姫がBellをくさすような発言をして炎上する。たしかに他人を貶めるようなことを言うのは受け入れ難いが、Bell本人が何か異論を説いたわけじゃない。世間が認める、または自分が好きな物が正しく、それをけなす者は敵となってしまい「叩いても良い物認定」されてしまうのだ。
そして最後が痛烈に響いた。ルカが悪者のように見えてしまうことで、私こそが「正しいと認められた者が正しい。その敵は悪。」を実行していたのだと気付かされた。劇中で多く描写されるヒロちゃんは鈴が認める友達である。そのヒロちゃんが悪く言うのだから、ルカちゃんはきっと忍との仲を妬む悪い娘なのだと思い込んだ。劇中のやり取りで「身元不明」で「叩いてもいい相手」という刷り込みを、何の疑いもなく享受してしまっていたのだ。蓋を開けてみればルカちゃんは恋敵でもないし悪い子でもない。もうね、それに気がついたときに自分が恥ずかしくなりましたよ。「理解しようとせず竜を叩くの良くない」と思ってた自分が似たようなことやってるんですから。映画で伝えたいメッセージに視聴者も巻き込むっていうの、初体験で衝撃でした。これだけでもレビュー書きたい!と思える仕掛けでした。

最後に名言
名言も多いですよね。完全に記憶できていないですが、私の心に響いた名言を2つ書いて終わりたいと思います。

「このメッセージが正しく伝わることを願っている。」

by メジャーリーガーFOX
いつもコートを着ていることで竜に疑われたメジャーリーガーが言った言葉。めっちゃ深い。切り取りや拡散、個人の解釈をいくらでも発信できるようになり情報の量は増えた。しかし、本当に伝えたい情報の質について考えさせる言葉。

「あんなに普通の子。私と同じ。」

by 元歌姫
Bellがアンベイルされて鈴に戻ったときに元歌姫が発した言葉。正体は有名人等だと噂されていて勝手な想像も加わることで架空の存在と化してしまいがちなシンボルが、実は身近な人間なんだと知ったときに自分の認知の歪みに気がつく。

歌も演出も大画面で見たほうが絶対良いと思うので、もし見てない人は劇場へ足を運ぶことをオススメします。

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