2019年12月13日公開映画の屍人荘の殺人
ちょっとやりたいことが渋滞している感は否めないですが、簡単に言ってしまえば両極端がたくさんある作品なんですよねこれって。その両極端を引っ張りあわせて高めていこうという試みが感じられる。例えるならば、ぶんぶんごま(円盤に糸を通し、その糸の両端をもって円盤を回すあそび)のよう。両端を引っ張る力で中心の爆発的な回転力を生み出そうとする仕掛けが満載でした。だから、〇〇が見たい!と趣向がきっちり別れてしまっているのであれば評価は低くなりがちな作品だと思います。以降ネタバレあります。

ぶんぶんごま


両極端とは
まず、この映画の話の大筋で進めていくのは推理ミステリーであり、これは現実的な範疇を超えてはならない制約がある題材です。それに対して、描かれる舞台がゾンビ映画という空想的な環境であるという点が味噌です。もうこの時点で「は?ありえない」といった感想を持ちそうですが、この両端を引張る力が俳優陣のキャラクターです。浜辺美波、神木隆之介、中村倫也というチョイスがいいですね。登場人物としてのキャラクターがとても重要な引力となるのでこれを壊さない俳優じゃなければならない。が、壊さないどころかこの俳優たちは自身が持つ魅力で良い後押しをしていると感じました。この命のかかった緊張感ある現場で起きる、ゆるいお笑いを成立させる神木隆之介の可愛さと人間味。浜辺美波は可愛さに不思議をトッピングして魅力にできる、中村倫也は何をするのかわからない静かでうるさい存在感。この俳優陣は持ち前の可愛さでゾンビの醜さもギャップに昇華させました。

迷宮くんがドア開けを成功させたことに素直に驚きと称賛を表す図


これだけたくさんある両極端なギャップをどう評価するかで大筋の満足感が変わります。言い換えれば、ありえないからと心が離れる機会は多いということになるので、そこで終わってしまう人も多いでしょう。反対に、感情が行ったり来たりする刺激が多いので、飽きずに見続けることができる人も多いでしょう。私は後者でした。
浜辺美波のキャラクターが飽きさせないし、神木隆之介のいじられ方が優しいいじりで好きだし、中村倫也が常にちらついて「いつでてくるの?流石に無理でしょ」と気になって仕方がない。キャラクターに引き込まれた私はがっちり心を掴まれました。だからちっちゃな笑いが常にハマって笑いが絶えなかったので飽きが来ませんでした。


しかし評価は3.8
キャラクターが良いので随所に引き込まれるポイントが沢山あり、本当に楽しく見ることができました。終盤までは非常に高評価で見続けていました。ですが肝心なミステリーの解法に勢いを感じません。このときのミステリーとはトリックだけではありません。この映画、キャラクター推しをしていましたがミステリーも沢山あります。

大筋であるトリックがミステリーというのは当然ですが、剣崎がなぜ明智の前に現れたのか、サークルの過去、ゾンビ発生の理由、明智の生存、ワトソンと剣崎の恋などが気になる謎として挙げられるでしょう。この謎、気になるところまでは上手い誘導があるんですよね。でもどの理由も過程を超えてこないというか、満足感が足りず無難な理由といった印象です。
キャラクターが強かったかたからなのかなぁ。犯人がとっさに考えたにしては練られたトリックだし、剣崎のワトソンが欲しいという動機付けもいきなりの設定だから共感度も低い。ゾンビがどうして発生したのかに触れ無いというスタンスは自体は良いのだけど、フェス会場だけで起きたと思わせる状況が納得感無いんですよね。他のゾンビ映画の先入観もあって、注射器でテロを起こすような集団が、鎮圧可能なレベルのパンデミックでは満足しないと思ってしまう。これらがちょいと物足りなさの原因です。

救助の図
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総じて
一つ一つの謎にちゃんと説明が付くので、「ありえない」と心が離れないように計算されていて本当に丁寧な作りだと思います。でてくるキャラクターも魅力的で飽きないです。なので序盤~中盤までは4.5/5点といった印象でしたが、オチがちょっと普通なのでやはりミステリーという点でマイナスをつけざるを得ない。終盤を含め総評は3.8/5点となりました。
謎すぎる展開に心が離れる前に魅力までたどり着けるかが評価の分かれ目です。俳優陣の魅力を感じながら没入していくことをおすすめします。

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